住宅ローンは本当にシュミレーション通りに完済できるのか

人生の中で最も大きな買い物と言っても過言ではない、住宅の購入。現金一括でのお支払いと行きたいところであるが、この不景気の中そう簡単にはいかないものだ。ほとんどの人たちが住宅ローンを組んで支払いをする。20年~35年ほどかけて完済を目指していくわけだが、ここで一つ疑問が生まれる。みんな、長期に渡って支払いができる確証があるのだろうか?と。

家族の大黒柱である父親が、果たして同じ会社で今と変わらぬ収入で、30年ほど働き続ける確率というのはどのくらいなのであろうか。個人的には、かなり少ないような気がしている。周りを見ても、友人の父親の中で一つの会社で定年まで勤め上げた人、という例はあまりない。この時代の流れでリストラに合う人もいれば、第二の人生をスタートさせたくて転職する人もいる。また、定年になるまで一度も病気をせずにいられる可能性も低く、身体的に働けなくなることだってあるだろう。30年もの月日の中でなら、起こり得ることであると解っているはずなのに、なぜ皆、30年返済計画のシュミレーションができるのだろう。しかも、中には自分が出世するだろう、子供が手がかからなくなったら経済的に余裕が出るだろうと見越して、10年後以降の返済額をはなから増やして計画を立てる人もいる。「タラレバ」の話でシュミレーションするのだから、すごい度胸だと思う。

実際、私の知人の両親も一軒家を購入、30年ローンで支払い計画をたてた。しかし、数年後父親の経営する店が赤字続きとなり、閉店を余儀なくされた。ちょうどそのころ二人の子供が大学に通うようになり、収入は減り支出は激増する状態に。それでも、ローンの支払いは続く。こんなはずではなかったのに、と嘆きながらも計画通りに支払いをしなければいけないので母親がいくつも掛け持ちでパートをしながらなんとかやってのけたようだ。現実には、こういう人たちばかりなのではないかと思う。

支払いの途中で計画通りに返済ができないと判断した場合、月額を減らしたりも不可能ではないと思うのだが、そもそも定年までで完済するとしていたものがずれ込むと、もう年金からローンを支払っていくしかない。そうなったときに年金以外の収入がなければ当然、生活が苦しくなってくる。老後に安心して過ごすための一軒家購入であったはずなのに、振り回された挙句、住居を売りに出す羽目になってしまったとしたら何とも悲しい事である。

最近では、国の税率の変動に影響されて「今のうちに家を買いましょう」という急かし文句をよく耳にする。今の方がお得です、今買わないと損をします、と。しかしだからと言って安易に購入を決めるのはどうなのかと思う。税率の変動で影響されるのは他でもない、自分たちの生活や収入なのだから真剣に熟考しなければならない。

閉じる